病室を訪れますと、患者さんのご家族が出迎えてくださいました。
起き上がれないほど衰弱されているご様子に戸惑ってしまいました。
「この子は歌うのが大好きで、コーラスグループに入っていたんですよ」「ここで演奏が聴けるなんて、喜んでいますよ」
♪早春賦♪を弾いてみますと、かすかに患者さんの声が歌が聞こえてきます。お姉さん、お母さんはボロボロと涙を、そして一緒に口ずさみます。私は事情が解らぬままコーラスで歌いそうな曲を続けました。
翌週、看護師さんから「あの日の夜遅くに亡くなられました。ご家族の方から…とてもいい最期になりました、とお伝えください…と」